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小さな暖炉の業火が、心の闇をあぶりだす--「リトル・インフェルノ」から感じた、“自由”の意味について考えてみよう

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この3連休中に、2015年4月2日に配信された
Wii Uダウンロードソフト「Little Inferno リトル インフェルノ」を遊びました。

配信直後から購入はしていたものの、
遊びたいゲームが多すぎて手つかずになっていたものの1つです。


掴みや雰囲気がバッチリでしたし、
ストレスのないようシステムが整理されていたこともあって、
あっという間にエンディングまで駆け抜けることになりました。

「リトル インフェルノ」の世界にひそんでいるテーマが、
ちょうど私が追究しているテーマとシンクロしていたので、
ふかく共鳴できたような気がするのです。


今回は「リトル インフェルノ」の内容について
気ままに書き下していきたいと思います。

一応ネタバレはありません。


◆はじめに軽く、ゲームシステムと感想をまとめておきます




「リトル インフェルノ」は、覚えるべきルールがほとんど存在しないゲームです。

プレイヤーの目の前、つまりテレビの画面には
ただひたすら暖炉が映されています。


そこに好きなアイテム……

とうもろこし卵などの食べ物、
思い出のつまったオモチャや写真、
はては生き物にお金なども投げ入れて
勢いよく燃やしつくしていきます。


ときどき手紙やプレゼントが届きます。
でも、それらも火にくべてしまってかまいません。

はじめは良心がチクリと痛みますけど、そのうち薄らいできます。
そういうゲームなのです。


暖炉とアイテムを手に入れるためのカタログを眺めているだけで
ゲームの進行に必要な要素のほとんどを目にすることができます。

時間制限はありません。
タイミング良くボタンを押す類いの、攻略テクニックはほぼ要求されません。

1つ1つのアイテムにユーモアやアイデアが詰まっていますし、
燃えている様子を見つめているだけで気分がよくなってきます。


そんな「リトル インフェルノ」ですが、
きちんとゲーム性は備えられています。

特定のアイテムをくみあわせて燃やすとコンボが発生して
実績が解除されていくんですね。
コンボ探しが地味にやりがいのある、楽しい作業なのです。


公式サイトで「不思議な言葉遊びパズル」という説明があり、
なるほど言い得て妙だな、と思いました。



◆突如、心の深淵にひそむ闇が顔をだす瞬間がやってくる



「リトル インフェルノ」はホラーゲームではありませんが、
随所にプレイヤーの不安を煽るような演出がさしはさまってきます。

プレイしながら胸がざわついているけれども
ゲーム側に原因があるんだろう、と最初は考えていました。


ですが、ゲーム中に散らばる文章や音がさししめす意味を
ちまちまと拾い上げていくにつれて、
どんどん違和感が大きくなっていきます。

そうして名状しがたいこの恐怖は
自分の胸のうちから引きずり出されてきているんだ、という確信に変ったのです。



自分の目に前にある物を 好きなだけ、好きなタイミングで燃やしていい、というシステムは童心をくすぐります。

子供の頃、おばあちゃんが畑の一角でゴミを燃やしていたのですが
ゴミを燃やすのを見るのも、手伝うのも好きでした。


燃やす、燃えている様子を見る、
その行為自体に独特の快感があるんでしょう。

「リトル インフェルノ」はまず、私たちのなかにある
『あらゆるものを燃やしてみたい』という根源的な欲求を解放してくれるのです。


暖炉で物を燃やし続けていると、
燃やすこと自体への新鮮味がうすれてきます。

それでも、飽きることはありません
炎がはぜているときの音や光には、不思議な引力があるように思えます。

アイテムの種類によって燃え方に個性がありますし
組み合わせやタイミングなどで多様性がうまれるので
暖炉の様子がおなじような状態でたもたれることもありませんしね。



はじめは思い出の写真や手紙、プレゼント、
お金などの他人の資産を燃やしてしまうことに抵抗を覚えます。

燃やし続けていくうちに、良心の呵責はどこかに行ってしまって
どうでも良くなってくるわけです。


それどころか、もっともっと燃やしていたいなあという気持ちが強くなってくる。

はたと自分の中に自然と根付いている破壊衝動が、
顔を出していることに気づくんです。


なにかを壊したいとか、無責任な行動を楽しむだとか、
自己中な願望があると思っていなかった (常識的な人間だと思っていた) ので
そういった側面に気がついたときに少なからずショックを受けます。


「リトル インフェルノ」の怖いところは、
無意識にひそんでいる欲望や恐怖をゆっくり引きだしてくるところでしょう。

目を背けたいと思っている記憶や感情を
うまい具合に刺激してくるんです。
シンプルだけども、計算されつくした演出は見事なものでした。


おそらく制作者の目論みどおりにプレイしてしまった私は、
「リトル インフェルノ」がもたらす奇妙な恐怖と快感に翻弄されることになったのです。



◆ゲームならではの“面白さ”と“可能性”


「リトル インフェルノ」をプレイしながら
「なんだか自由を感じるなあ……」という感想がうかんできました。

自由度の高いゲームといえば、
マップが広く、反応のあるオブジェクトが豊富で
ストーリーに縛られずにミッションをこなすことができるもの
(オープンワールド系のゲーム) というイメージがありました。


「リトル インフェルノ」はその先入観にあてはまっていないのに、
不思議だなと思ったんです。


いろいろ考えてみたのですが、
常識の世界で生きていたらためらうような行動を反復することで
自分を縛り付けている理性がゆるむといいますか。

ふわっとリラックスできる感触があります。
そのことに自由を感じたのかもしれません。


もうひとつ、ゲーム全体の情報量が絞られていることも功を奏している気がします。

つねに大量の情報を摂取してしまう今の時代だからこそ、
限られた情報やルールのなかにとどまっていられることに安堵を覚えるんです。

閉鎖的な空間で、自由な気持ちを味わっていられる、
こういった快感はなかなか体感できるものではありませんよね。



ゲーム画面がずっと暖炉の前に固定されていようとも
限られたアイテムを燃やすことしかアクションを選べなくても、面白い。

物量勝負になってしまっている昨今のゲーム業界ですが
「リトル インフェルノ」のゲームシステムから、温かな希望を感じとることが出来ました。


基本無料のゲームにしろ、有料のうりきりのゲームにしろ、
要求されるプレイ時間が増え続けていますからね。

物量が多いゲームもいいですが、
純粋に心が動かされるゲームをもっともっと楽しみたいものです。




配慮のいきとどいたローカライズを手がけた
日本の任天堂スタッフさんに感謝を!

上記の紹介映像、「リトル インフェルノ」の世界観がぎゅっと凝縮されていてステキですよ。
未プレイの方はぜひご覧ください。


最後まで目を通していただき、ありがとうございます。

寒さがこたえる日は、暖房のきいた部屋で
「リトル インフェルノ」をプレイしましょう!


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