2014年1月の経営方針説明会にて
『「キャラクターIPを積極的に活用していく」という方針』を
表明していた任天堂。
2014年5月8日の決算説明会で
ビデオゲームと連動する、NFC機能を埋め込んだフィギュア群を展開する事業、
NFP(Nintendo Figurine Platform)を発表しました。
◆任天堂の人気キャラをフィギュア化し、ゲームと連動させる試み
あらたに発表されたばかりのビジネス、
NFP(Nintendo Figurine Platform)について
軽く内容をまとめておきましょう。
NFP(Nintendo Figurine Platform)のフィギュアは普通の観賞用フィギュアとは違い、
コンパクトなゲームのデータを書き込んだり読み込んだりといった
機能がついているのが特徴です。
つまりWii Uと3DSのゲームとフィギュアを直接連動させることができるのです。
ゲームとフィギュアを連動するときには
NFCという機能を使用することになりますね。
Wii UゲームパットにはあらかじめNFCがついています。
3DSにはNFCがついていないので、
NFCリーダー・ライターが開発されています。
NFP(Nintendo Figurine Platform)事業展開のうまみについて、
岩田社長は以下のように説明しています。
「任天堂のキャラクターIPの自社による積極的な活用」としての先行事例としての意味を持ちます。
そして同時に、任天堂製品の売り場に、ゲーム機ハードの化粧箱やソフトのパッケージだけでなく、任天堂のキャラクターのフィギュアが展示・陳列されることは、露出拡大により、任天堂キャラクターIPを知っていただくきっかけ、ゲームに触れていただくきっかけをつくるうえでも、大きな意味があると考えています。
「露出拡大」という言葉にピンと来ない方がいらっしゃるかもしれません。
任天堂の商品が置いてあるスペースが大きくなれば、
物理的に存在感が増すので宣伝効果がある、ということですね。
たとえば最近ではコンビニに任天堂のプリペイドカードや
最新ゲームのダウンロードカードが陳列されるようになりました。
全国のコンビニで最新のゲームが発売されたことを
宣伝できるようになったわけです。
ゲームショップや家電量販店などで任天堂のカードが陳列されるようになったので、
3DSが発売されたころに比べたら
露出面積はだいぶ大きくなりました。
すでに海外ではActivisionの「Skylanders」、
Disney Interactiveの「Disney Infinity」という
2つのIPが大きなマーケットを形成しているそうです。
上記の写真は海外の「Skylanders」ファンの方が
フィギュアが陳列された店頭を撮影したものです。
パッケージソフトが何本か並べられている状態よりも
ビジュアル的インパクトが強くなっていることが分かります。
※引用元→http://www.1ofwiisdom.com/2012/05/weekly-update-skylanders-and-scalpers.html
◆「いっしょにフォト」シリーズの成功
任天堂はニンテンドープリペイドカードに
おまけの無料ゲーム「いっしょにフォト」をつけたシリーズを展開しています。
金券を購入すると、人気キャラを3DSのカメラで撮影するソフトが
無料でついてくる仕組みですね。
現在発売されているシリーズは、
「スーパーマリオ」「とびだせ どうぶつの森」「ピクミン」の3種類。
2013年10月の段階で130万枚を超える大人気商品なんだとか。
ここ2年でデジタルコンテンツの売上げは3倍の水準になっているので、
今はもっと売上げを伸ばしていることでしょう。
プリペイドカードの売上げを増やせたという短期的な収益はもちろん、
キャラ人気の力を数値化できたという成果があったのではないでしょうか。
◆フィギュアビジネスの可能性=財布の紐をゆるくする
「フィギュア ビジネス」という単語で検索をかけてみたところ、
4gamerが「ねんどろいと」「figma」シリーズで有名なグッドスマイルカンパニーに
取材している記事を見かけました。
高品質なフィギュアを作ろうとすると、
製造工程が複雑で手間がかかり利益が出にくい、
リリースされた中でヒットするのは上位3パーセントだけなど
意外にもゲーム業界との共通点がおおい業界だと感じました。
2010年にフィギュアのプロモーションのために
「ブラック★ロックシューター」の50分アニメを制作、
無料で配布した事例についてもインタビューされていました。
アニメを無料公開した結果、
「ブラック★ロックシューター」のフィギュアは
過去最高の予約数を記録したそうです。
アニメやゲームなどの物質のないデジタルコンテンツに対してお金を出し渋る消費者を
フィギュアというアナログ商品へと導くことに成功したプロジェクトだったと評価できると思います。
「ブラック★ロックシューター」の成功プロセスは、
NFP(Nintendo Figurine Platform)展開の理由と重なる部分があるように感じます。
任天堂はゲーム文化を守るため、
ゲームの価格破壊が起こることをおそれている会社です。
そのために年々増大するゲーム開発費を
追加コンテンツという形で補い利益を確保しようとした場合
ユーザーから反発を受けることがあります。
目に見えないコンテンツの値段や価値を
購入前に外から判断するのが難しいためです。
デジタルデータの価格が適切なものであるかどうか、
ある程度の経験を積まなければ分からないでしょう。
それに対して、フィギュアの価値は目に見える物なので
非常に分かりやすいですし、愛着がわきやすい商品ですね。
ゲームの追加データを「無料でください」とお願いするユーザーはいますが、
精密につくられたフィギュアを「無料でください」とお願いするユーザーはいないでしょう。
手間暇かけて作られたアナログ商品は
タダでは手に入らないと経験上知っているからです。
NFP(Nintendo Figurine Platform)は
手頃な価格帯のフィギュアを販売し
そのフィギュアをユーザー用にカスタマイズできるシステムを用意します。
たとえば手元のマリオフィギュアを好みの仕様にしたかったら
ゲームやゲームの追加コンテンツを別途購入することになります。
今までの追加コンテンツと仕組みと似ているのですが、
手元に人形の物体があるだけで
心理的な抵抗が小さくなると予想されるのです。
任天堂公式のフィギュアが発売されると
コレクター気質の任天堂ファンは嬉しいですよね。
私もとてもワクワクしています。
それにお子さんもダウンロードカードを買って欲しいとお願いするよりも
フィギュアの方が親御さんにねだりやすいと思うのです。
2014年の年末商戦、華やかになりそうですし
とても楽しみになりました。
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